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2026.5.20

カスタマーハラスメント防止法の義務化:中小企業の経営者が知っておくべき「守り」と「攻め」の経営

近年、ニュースやSNSでもたびたび話題になる「カスタマーハラスメント(カスハラ)」。理不尽なクレームや暴言に悩み、心身を壊してしまう従業員が増えていることは、企業にとって無視できない深刻な問題です。
令和7年(2025年)6月11日に、カスハラ防止を柱とした改正法が公布されました 。これにより、令和8年(2026年)10月1日から、すべての企業に「カスハラ防止措置」を講じることが法律で義務付けられます。
法律事務所の視点から、この改正のポイントと、中小企業の社長が明日から取り組むべき対策をやさしく解説します。

なぜ今、カスハラが法律で規制されるのか?

これまでも、企業には従業員が安全に働けるよう配慮する「安全配慮義務」がありました。しかし、現場では「お客様だから」という理由で耐え忍ぶことが美徳とされ、対策が後手に回りがちでした。

今回の法改正(労働施策総合推進法の改正)は、国が「これからは企業が組織として従業員をカスハラから守りなさい」と明確にルール化したものです 。これにより、対策を怠って従業員が健康を損なった場合、企業の法的責任(賠償責任など)がより厳しく問われるようになります。 

「どこからがカスハラ?」改正法が定める3つの基準

何でもかんでもカスハラにしてしまうと、正当な苦情まで切り捨ててしまう恐れがあります。そこで、国は指針によって「カスハラ」の定義を以下の3つすべてを満たすものと定めました 。 

  1. 顧客等による言動であること
    • 現在の顧客だけでなく、将来顧客になり得る人や、取引先の担当者も含まれます 。 
  2. 社会通念上、許容される範囲を超えていること
    • 要求内容に正当な理由がない(例:商品と無関係な謝礼を要求する)、または、要求の手段が不相当(例:暴言、土下座の強要、執拗な電話)な場合を指します 。 
  3. 労働者の就業環境が害されること
    • 従業員が精神的・身体的な苦痛を感じ、仕事に集中できなくなるような状況です 。 

逆に言えば、商品への不備に対する「正当な申入れ」はカスハラには当たりません 。この「正当な苦情」と「理不尽なカスハラ」の線引きを会社として持つことが、最初の一歩になります。

社長が必ず行わなければならない「雇用管理上の措置」

法律が求めているのは、単に「気をつけよう」と呼びかけることではありません。具体的に以下の体制を整える必要があります。

会社の「方針」をハッキリ示す(周知・啓発)

社長自らが「わが社はカスハラを許しません」と宣言することが何より重要です。

  • 就業規則や社内掲示板、ホームページなどで「毅然とした対応をとる」という方針を明文化してください 。 
  • 「相談した従業員をクビにしたり、冷遇したりしない(不利益取扱いの禁止)」というルールもセットで周知する必要があります 。 

従業員の「逃げ道」を作る(相談体制の整備)

被害を受けた従業員が、一人で抱え込んで辞めてしまわないための仕組みです。

  • 相談窓口(担当者)を決め、従業員に伝えます 。 
  • 窓口の担当者は、プライバシーを守り、被害者の心身の状況に配慮しながら対応します 。 

いざという時の「武器」を用意する(事後対応)

実際にトラブルが起きたとき、誰が、どう動くかを決めておきます。

  • 現場からすぐに報告を上げ、必要に応じて上司が交代するなどのルールを作ります 。 
  • 録音や録画などの「客観的な証拠」を確保する体制を整えましょう 。 
  • 特に悪質なケース(暴行や強迫など)については、警察への通報や弁護士を通じた法的措置をとることも、法律上の有効な措置として認められています 。

社長に伝えたい「カスハラ対策」の真のメリット

「法律だから仕方なくやる」と考えるのはもったいないことです。カスハラ対策をしっかり行っている企業は、経営上、大きなメリットを享受できます。

  • 人材の流出を防ぐ(採用コストの削減)

今、求職者は「従業員を大切にする会社か」を厳しく見ています。カスハラ対策を公言することは、最高の採用ブランディングになります。

  • 生産性の向上 理不尽な相手に何時間も拘束される時間は、会社にとって大きな損失です。「一定の時間を過ぎたら打ち切る」というルールがあれば、従業員は本来大切にすべき優良顧客のために時間を使えるようになります 。 
  • 組織の風通しが良くなる

「困ったら会社が守ってくれる」という安心感は、従業員のエンゲージメントを劇的に高めます。

まとめ:令和8年10月に向けたスケジュール

施行までにはまだ時間がありますが、マニュアル作成や研修の実施には準備が必要です。

  1. まずは現状の把握: 現場でどのようなトラブルが起きているか、アンケートなどを実施してみましょう 。 
  2. 基本方針の策定: 社長名で「カスハラ防止宣言」を出しましょう 。 
  3. 窓口とルールの構築: 相談を受けた後の流れを決め、従業員に伝えます。

カスハラ対策は、従業員の心を守るだけでなく、大切な会社のブランドを守るための「攻めの経営」です。もし「自社のマニュアルが法律に適合しているか不安」「就業規則をどう変えればいいか」といった疑問があれば、お気軽に当事務所のような専門家へご相談ください。

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