契約書テンプレート
初期検討
6-1 秘密保持契約書(NDA)
M&Aの初期検討段階において、相手方に開示する情報の秘密保持義務を定める契約書です。
本契約は、買収検討のために必要となる財務情報や技術情報などの機密情報を開示する前に締結されます。
情報の目的外使用の禁止や、情報開示範囲の制限、情報漏洩時の損害賠償責任などを明確にします。
双方が情報を開示し合う双務的な内容となることが一般的です。
これにより、自社の重要な営業秘密が外部に流出するリスクを低減し、安全な情報交換を実現します。
6-2 差入式秘密保持誓約書
情報受領者から情報開示者に対して、一方的に差し入れる形式の秘密保持誓約書です。
主に、売手企業が買手候補企業に対してのみ機密情報を開示するような、片務的な情報開示の場面で使用されます。
契約書のように双方の署名捺印を必要としないため、迅速に手続きを進めることができる点が特徴です。
誓約者に対して、情報の厳格な管理、目的外使用の禁止、第三者への開示禁止などを強く義務付けます。
M&Aの初期段階で、多数の候補先に初期的な情報を開示する際などに便利です。
6-5 ネームクリア確認書
案件の初期段階において、自社の名称を具体的な買手候補企業に対して開示することに同意する書面です。
M&Aの初期検討では、企業が特定されないよう匿名(ノンネーム)で打診が行われますが、相手方が関心を示した場合に、実名を開示して詳細な検討に進むために必要となります。
名称開示の対象となる企業を特定し、その企業に対してのみ開示を許可する旨を記載します。
情報漏洩のリスクをコントロールしながら、具体的な交渉相手を絞り込んでいくプロセスで重要な役割を果たします。
6-6 意向表明書(LOI)
買手候補企業から売手企業に対して、対象会社を買収する意向や希望する条件を提示する書面です。
買収価格の目安、想定されるスキーム、スケジュール、資金調達の方法、今後のデューデリジェンスの実施方針などが記載されます。
一般的に法的拘束力は持たせませんが、秘密保持や独占交渉権に関する条項については法的拘束力を付与することがあります。
売手はこの書面をもとに、複数の候補先から交渉を継続する相手を選定し、基本合意に向けた本格的な協議へと移行するための重要な判断材料とします。
6-7 基本合意書(MOU)
当事者間で合意したM&Aの基本的な条件を確認し、今後の交渉の枠組みを定める書面です。
意向表明書を経て、主要な条件(買収価格の算定方法、スキーム、スケジュールなど)について大枠の合意が形成された段階で締結されます。
原則として取引実行の法的拘束力は持たせませんが、独占交渉権、秘密保持義務、費用負担などの一部条項には法的拘束力を持たせます。
これにより、買手は安心してデューデリジェンスを実施でき、売手は誠実な交渉を期待できるため、取引の確実性を高める効果があります。
6-8 独占交渉権付与に関する覚書
基本合意書の締結に先立ち、買手候補に対して一定期間の独占交渉権のみを付与する覚書です。
他の候補者との交渉を禁止することで、買手は時間と費用をかけて詳細なデューデリジェンスや条件交渉に専念することができます。
対象期間、対象となる取引の範囲、違反した場合の損害賠償などを定めます。
売手にとっては他の有利な提案を受ける機会を失うリスクがあるため、期間の設定や付与のタイミングは慎重に検討する必要があります。
競合状態を排除し、特定の相手との交渉を深める際に用いられます。
アドバイザリー
6-3 フィナンシャル・アドバイザリー契約書
M&Aの実行に向けて、助言業務や手続きの支援を専門家に委託するためのFA契約書です。
対象会社の価値評価、スキームの立案、候補先の選定から条件交渉、クロージングに至るまで、幅広いサポートを依頼します。
業務の範囲、報酬の算定方法(レーマン方式など)、支払時期、秘密保持、専任条項などを詳細に定めます。
特に、成功報酬の条件や中途解約時の取り扱いについては、後日のトラブルを防ぐために明確にしておく必要があります。
専門的な知見を活用し、円滑なM&Aを実現するために不可欠です。
6-4 仲介契約書
M&A仲介会社との間で、売手と買手のマッチングや条件交渉の仲介を依頼するための契約書です。
仲介会社は双方の間に立ち、中立的な立場で案件の成約に向けた調整を行います。
FA契約と同様に、業務範囲や報酬体系、専任条項、秘密保持義務などを規定しますが、双方から手数料を受領する利益相反のリスクに対する配慮も必要です。
着手金、中間金、成功報酬といった報酬の支払いタイミングや金額の算定根拠を明確にします。
適切な相手方を見つけ、効率的に交渉を進めるために利用されます。
デューデリジェンス
6-9 資料開示要請リスト(法務DD)
法務デューデリジェンスにおいて、対象会社の法務リスクを調査するために提出を求める資料のリストです。
定款、登記簿、株主名簿などの基本情報から、重要な契約書、就業規則、許認可関連、係争中の訴訟に関する資料まで、多岐にわたる項目を網羅します。
対象会社の事業内容や規模に応じて項目をカスタマイズし、必要な情報を漏れなく収集できるように設計されています。
このリストに基づいて開示された資料を専門家が精査することで、買収に伴う法的リスクを洗い出し、契約条件への反映を検討します。
6-10 マネジメント・インタビュー質問票
対象会社の経営陣やキーマンに対して実施するインタビューの質問事項をまとめたシートです。
資料だけでは把握できない、経営の意思決定プロセス、事業の強みや課題、業界の動向、組織風土、将来の展望などについて直接ヒアリングを行います。
事前に質問票を送付して回答を準備してもらうことで、限られた時間内で効率的かつ深い議論を行うことが可能になります。
経営陣の考え方や経営能力を評価し、M&A後のPMI(経営統合)をスムーズに進めるための重要な情報を収集する目的で使用されます。
6-11 法務デューデリジェンス報告書
弁護士などの専門家が実施した法務デューデリジェンスの結果をまとめ、買手企業に報告するための書面です。
対象会社の設立・組織、株式、契約関係、人事労務、コンプライアンス、知的財産など、各分野における法的リスクの有無と程度を詳細に記載します。
発見された問題点については、その重大性を評価し、買収価格の減額、契約書での表明保証や前提条件の追加、あるいはディールブレイクの判断といった対応策を提言します。
最終的な買収決断や契約交渉の基礎となる極めて重要なドキュメントです。
6-12 開示依頼書 兼 誓約書
法務DD報告書を第三者に開示する場合に、開示依頼者に作成を求める書面です。
6-13 Q&A管理シート
デューデリジェンスの過程で生じた買手からの質問と、対象会社からの回答を一元的に管理するためのシートです。
質問事項、回答内容、担当者、ステータス(未回答・回答済など)、関連資料へのリンクなどを一覧表形式で整理します。
多数の質問と回答が飛び交うDDプロセスにおいて、情報の錯綜や回答漏れを防ぎ、効率的なコミュニケーションを実現します。
また、このシート自体がDDの記録として残り、後日の確認や、表明保証違反が問われた際の証拠資料としても機能する重要なツールとなります。
実行手続(株式譲渡)
6-14 株式譲渡契約書(SPA)
売手株主から買手に対して対象会社の株式を譲渡し、経営権を移転する際の最終的な基本契約書です。
譲渡株式数、譲渡価額、クロージングの前提条件、表明保証、誓約事項、補償条項、解除条件など、取引のすべての条件を詳細かつ厳密に定めます。
デューデリジェンスで発見されたリスクに対する手当てや、M&A実行後の当事者間の権利義務関係を明確にするための中心的な役割を果たします。
対象会社の規模や複雑さに応じて内容は多岐にわたり、専門家による慎重なドラフティングと交渉が不可欠です。
6-15 株主間契約書
M&A後に対象会社が複数の株主によって共同経営される場合や、一部の株式を譲渡して合弁会社化する場合に締結される契約書です。
取締役の指名権、重要な意思決定における拒否権(事前承認事項)、株式の譲渡制限、デッドロック発生時の解決手段などを定めます。
株主間の権利義務関係を明確にし、少数株主の保護や経営の安定化を図ることを目的とします。
特に、売手が一部の株式を保有し続けるケースや、複数のファンドが共同出資するケースなどで、円滑な会社運営を担保するために重要です。
6-16 経営委任契約書
M&Aの実行後、売手企業の元経営者に対して、引き続き対象会社の経営や顧問業務を委任するための契約書です。
業務の引き継ぎ、取引先との関係維持、従業員のケアなど、円滑なPMI(経営統合)を実現するために、一定期間の協力を求めます。
委任する業務の範囲、期間、報酬、競業避止義務、秘密保持義務などを具体的に規定します。
元経営者の知見や人脈を活用することで、買収後の事業運営の安定化を図り、M&Aのシナジー効果を早期に発揮させるための実務的な対応として活用されます。
実行手続(事業譲渡)
6-17 事業譲渡契約書
会社そのものではなく、特定の事業部門や資産・負債を選択して譲渡するスキームにおいて締結される契約書です。
譲渡対象となる資産(設備、在庫、知的財産など)、負債、契約上の地位、従業員などを個別に特定し、それぞれの移転手続きを定めます。
株式譲渡に比べて手続きが煩雑になりますが、不要な資産や簿外債務を引き継ぐリスクを遮断できるというメリットがあります。
競業避止義務の免除や従業員の転籍条件など、事業譲渡特有の論点についても詳細に規定し、円滑な事業の引き継ぎを実現します。
6-18 雇用契約引継ぎに関する同意書
事業譲渡や会社分割などの組織再編に伴い、従業員の雇用契約を買手企業に引き継ぐ(転籍させる)際に取得する同意書です。
労働条件の変更の有無、勤続年数の通算、退職金の取り扱いなど、転籍に関する具体的な条件を明示し、従業員本人の自由な意思に基づく同意を得ます。
労働者保護の観点から、十分な説明と協議を行うことが法的に求められており、この同意書はその手続きが適正に行われたことを証する重要な書面です。
優秀な人材の流出を防ぎ、事業の継続性を確保するために不可欠なプロセスです。
実行手続(組織再編)
6-19 吸収合併契約書
一つの会社が他の会社を吸収して権利義務のすべてを承継し、消滅する会社を解散させる組織再編スキームの契約書です。
存続会社と消滅会社の商号、合併の効力発生日、合併比率(対価の算定)、増加する資本金等の額など、会社法で定められた法定記載事項を網羅します。
また、従業員の引き継ぎや財産の管理など、合併実行に向けた実務的な取り決めも記載されます。
グループ内の組織再編や、規模の拡大、シナジーの創出を目的としたM&Aにおいて、法的手続きの基礎となる極めて重要なドキュメントです。
6-20 吸収分割契約書
株式会社がその事業に関して有する権利義務の全部または一部を、既存の他の会社に承継させる組織再編スキームの契約書です。
分割する事業の範囲、承継される資産・負債・契約・従業員、対価の算定方法、効力発生日などの法定記載事項を詳細に定めます。
特定の事業部門のみを切り出して他社に譲渡したり、グループ内の事業を再編したりする際に利用されます。
事業譲渡と異なり、権利義務が包括的に承継されるため、個別の同意取得手続きが一部軽減されるメリットがありますが、厳格な法定手続きが必要です。
6-21 株式交換契約書
ある株式会社の発行済株式のすべてを他の株式会社に取得させ、完全親会社と完全子会社の関係を創設する組織再編スキームの契約書です。
完全親会社となる会社と完全子会社となる会社の商号、株式交換比率(対価の算定)、効力発生日などの法定記載事項を規定します。
買収資金を用意することなく、自社の株式を対価として他社を100%子会社化できる手法として、上場企業によるM&Aなどで頻繁に利用されます。
少数株主を強制的に締め出し、迅速な意思決定を可能にするための強力なツールです。
6-22 債権者保護手続に関する公告・催告書
合併、会社分割、資本金の減少などの組織再編を行う際に、会社の債権者に対して異議を述べる機会を与えるための法定手続き書類です。
官報への公告に加えて、知れている債権者に対しては個別に催告書を送付し、一定期間内(通常は1ヶ月以上)に異議を申し立てることができる旨を通知します。
組織再編によって会社の財産状態が変化し、債権回収に支障をきたすリスクから債権者を保護することを目的としています。
この手続きに瑕疵があると組織再編の効力が無効となる可能性があるため、厳格な運用が求められます。
実行手続(クロージング)
6-23 クロージング確認書
M&Aの最終的な実行(クロージング)に際して、株式譲渡契約書等で定められた前提条件がすべて充足されたことを当事者間で確認する書面です。
前提条件には、必要な許認可の取得、重要な取引先からの同意取得、表明保証の正確性などが含まれます。
この書面を取り交わすことで、買収代金の決済と株式の引き渡しなどの履行手続きに移行することが確定します。
後日、前提条件の未充足を理由としたトラブルや契約解除のリスクを回避し、取引の完了を法的に担保するための重要なクロージング書類です。